奨学金を債務整理するとリスクだらけの理由とほかの解決策
奨学金は債務整理できるので返済額を減らしたり、なくしたりすることができます。
しかし、奨学金を借りたときの条件と債務整理の手続き内容をきちんと理解しておかないと家族に奨学金の請求が一括できてしまうことがあります。
身内に迷惑をかけて後悔する前に、奨学金と債務整理の関係は事前にしっかり確認しておくべきです。
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奨学金を減額できる債務整理の方法
奨学金を減額する効果が少ない任意整理
任意整理は、将来発生する利息のカットと、返済期間を3年~5年に延長することで毎月の返済負担を減らす手続きです。借金の返済が苦しい場合の減額方法として、債務整理の中でもっとも利用されている手続きです。
ただし、奨学金に対しては、任意整理による効果が少ないとされています。
一般的な貸金業者からの借り入れの上限金利は20%ですが、奨学金の上限金利は3%です。さらに、奨学金の返済期間は最長20年なので、一般的な借り入れよりも返済期間が長いです。
奨学金は利息が少なく、返済期間が長いので、利息のカットと返済期間を3年~5年に延長して返済額を減らす任意整理だと、効果がほとんど得られません。
また、奨学金は原則として保証人がついていて、任意整理の話をした時点で奨学金団体は保証人に返済の請求をするので、任意整理で話し合う必要性がありません。
奨学金以外の借金であれば効果的
奨学金以外に、カードローンやキャッシングといった借金がある場合は、奨学金以外の借金を任意整理することで、借金の総額を減らすことができます。
任意整理は、手続きの対象とする借金を選べる手続きです。奨学金以外の借金を減額することで奨学金の返済ができるのであれば、任意整理が効果的です。
奨学金以外の借金で返済が苦しいかたは、弁護士や司法書士といった専門家に相談をすべきです。
奨学金を含む借金を大幅に減額できる個人再生
個人再生は、裁判所を通して借金を5分の1から10分の1に減額する手続きです。 個人再生には「最低弁済額」が100万円と定められていて、借金の総額と最低弁済額の差が個人再生で減らせる額で、借金の総額が多いほど減額幅が大きくなるメリットがあります。
個人再生は、任意整理のように手続きの対象とする借金を選ぶことができないので、奨学金を含むすべての借金が手続きの対象になります。また、奨学金を個人再生して減額した場合は、減額した分が保証人に請求されることになります。
例えば、500万円の奨学金を個人再生した場合は、最低弁済額が100万円なので、400万円が減額されます。その減額した400万円が、奨学金の保証人に請求されることになります。
債務整理の方法:個人再生
奨学金:500万円
最低弁済額:100万円
減額した金額:400万円 = 保証人に請求
さらに、個人再生をすると国が発行している官報に、住所や氏名などが掲載されるデメリットもあります。
ただし、ローンを返済中の住宅や、ローンを完済した自家用車は、手元に残しておけるメリットがあります。
奨学金を含むすべての借金をゼロにできる自己破産
自己破産は、裁判所から借金を免除する「免責許可決定」を受けることで、奨学金をふくめたすべての借金をゼロにすることができます。
自己破産をするとすべての借金をゼロにできますが、保証人に対しては自己破産の効力がないので、保証人に一括返済が要求されます。連帯保証人である両親あるいは、保証人である親族に請求がいきます。
また、保証人がおらず日本国際教育支援協会といった保証機関が保証している場合は、保証機関がすべての借金を返済した後に、自己破産をした本人に請求がいきます。そのため、自己破産をしても、借金をなくすことができません。
さらに、自己破産をすると5年~10年間ブラックリストに載る、住所や名前が官報に載る、住宅や自動車といった一定以上の財産が差し押さえられることになります。
債務整理以外の奨学金の救済制度
月々の返済額を減らせる減額返還制度
減額返還制度は、災害やケガ・病気、所得基準よりも所得金額が低いといった理由によって奨学金が返済できない場合に、月々の返済額を2分の1~3分の1に減らすことができる制度です。
1回の申請で12カ月まで適用ができ、最長で15年まで延長することができますが、奨学金の返済の総額が減らせるわけではなく、あくまでも「月々の返済額」の減額です。
例えば、月2万円の返済を20年で支払った場合に、減額返還制度を利用して月々の返済額が1万円になって、それを15年まで延長したとします。
【通常】
返済金額:480万円
月々の返済額:月2万円
返済期間:20年
【減額返還制度】
返済金額:480万円
月々の返済額:15年まで月1万円、16年から2万円
返済期間:27年5か月
15年間は毎月の返済額を減額して返済の負担を減らすことができますが、かえって返済期間が長くなることで、将来的に返済の負担が増える可能性があるので、注意が必要です。
減額返還制度を利用する方法
減額返還制度を利用するには、日本学生支援機構(JASSO)に申請をおこなって、審査で認められる必要があります。
減額返還制度を申請するには、収入証明書や休職証明書といった添付資料が必要になる場合があります。
奨学金の返済を延滞していると減額返済制度を申請することができないので、奨学金の返済ができなくて延滞をする前に減額返還制度の申請をするようにしましょう。
所得に応じて返済額を猶予できる所得連動型無利子奨学制度
所得連動返還型無利子奨学制度は、無利子の「第一種奨学金」を借りた人だけが利用できる制度です。
卒業後に一定の収入が得られない場合に、日本学生支援機構に届け出をすることで、返還期限に猶予を設けてもらうことができます。
返還期限の猶予に制限はありませんが、1年ごとに申請をして承認を得る必要があります。
返済期限を延長できる返済期限猶予制度
返済期限猶予制度は、奨学金を返済できないときに、返済を先延ばしにできる制度です。
毎月の返済額を減額する減額返還制度とは違い、返済期限猶予制度は、日本学生支援機構に申請して認められることで、一定期間返済を止めることができます。
ただし、返済期間を先延ばしにできるだけであって、奨学金の元金や利息が変わらないので、返済の総額が減るわけではありません。また、返済を延滞すると、年1.5%~10%の利息をかけられてしまうので注意が必要です。
この制度は返済を延滞している場合でも申請することができますが、審査で認められない場合は返済を継続するしかありません。年収によって猶予期間がちがうので、事前にどのような条件があるのかや猶予期間がどれくらいなのかを確認する必要があります。
返済を免除できる可能性がある返済免除制度
返済免除制度は、返済中の奨学金の一部またはすべての返済を免除を申請できる制度です。
奨学金を借りた本人が亡くなってしまったときや、精神的あるいは身体的な理由で働けなくなったときに、奨学金の返済を免除してもらうことができます。
返済免除制度は、日本学生支援機構に相談をして貸与奨学金返還免除願をもらうことで、申請することができます。
奨学金を債務整理するリスク
奨学金を債務整理をするとブラックリストに載りますが、奨学金を債務整理するリスクはブラックリストに載るだけではありません。
奨学金には、原則として保証人がついているので、債務整理をすると保証人に返済の請求がいくリスクがあります。
奨学金返還請求が保証人である家族にいくリスク
家族に債務整理したことがバレる
本人が奨学金を返済できない場合には、奨学金の保証人である家族が返済をすることになるので、債務整理したことが家族にバレます。
ただし、家族が保証人ではない奨学金以外の借金を任意整理した場合には、奨学金の返済請求が家族に行くことがないので、債務整理したことが家族にバレることなく借金を減額することができます。
家族が奨学金の返済義務を負う
家族が奨学金の保証人になっている場合、債務整理をおこなうと奨学金の返済請求が家族にいきます。
家族も奨学金の返済が難しい場合には、家族も一緒に債務整理しなければならないリスクがあります。
奨学金返還請求が保証会社にいくリスク
利用した債務整理 |
任意整理・特定調停・個人再生 |
保証人が保証会社になっている場合に債務整理をすると、奨学金を借りた本人の代わりに保証会社が返済(代位弁済)することになります。
保証会社が代位弁済すると、借金を請求する権利が保証会社に移るので、代わりに支払った奨学金の分の金額を、奨学金を借りた本人に請求することができます。奨学金は分割で支払うことができますが、保証会社からの請求は、一括で支払わなければなりません。
一括で支払うことができない場合は、裁判となって自宅・自家用車・預金などの財産を差し押さえられるリスクがあります。
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