個人再生のデメリットを知れば任意整理を選ぶべきか判断できる
個人再生は債務整理の手段の1つで、借金を75%~90%減額することができる手続きです。個人再生は裁判所に申立てをして認可を得ることで実施できるもので、認可が得られないと借金の減額をすることができません。
借金を減額して返済額が全体の25%~10%になったら3年間かけて返済していくことになります。3年間かけて返済するしくみは任意整理と似ており、減額できる金額だけでみると個人再生の方がメリットが大きいと考える人も多いのではないでしょうか。
個人再生は借金を減額できる金額は多いですが、任意整理とちがったデメリットも持ち合わせます。個人再生の手続きをするにあたってデメリットを知っておかなければ、失敗に終わり、手続きの費用だけ借金が増えてしまうことにもなりかねません。この記事では、個人再生のデメリット・メリットを紹介した上で個人再生を選ぶべきか任意整理を選ぶべきかを解説していきます。
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個人再生を選ぶデメリット
信用情報機関に事故情報が登録される
個人再生をすると、信用情報機関に5年から10年のあいだ異動情報(ブラックリスト)が登録されます。
ブラックリストに登録されているあいだは、
クレジットカードの利用・新規作成ができなくなる
ローンの申し込みができなくなる
保証人・連帯保証人になることができなくなる
携帯電話の分割購入ができなくなる
といった、生活への影響があります。
官報に掲載される
官報は、政府が発行する新聞のようなもので、法律や裁判の内容などを公開するものです。
個人の名前や住所などが掲載されることがありますが、官報を日常的に確認する会社でないかぎり、個人再生の手続きが他の人に知られることはほとんどありません。
債権者を選ぶことができない
個人再生は、自己破産のように法的に債務を整理する手続きです。
個人再生では、すべての債権者に対して整理をおこなう必要があります。一方、任意整理は、自分で選んだ債権者だけに対して整理をおこなうことができます。
例えば、車のローンや保証人がいる奨学金、親子間の借金、友人間の借金、勤務先からの借金などは任意整理で除外することができますが、個人再生ではそれらを含めて手続きをおこなう必要があります。
ただし、住宅ローンは、住宅ローン特則によって手続きから外すことが認められる場合があります。
ローンを返済中のものは手元に残せない
個人再生をおこなうと、ローンを支払っている財産をすべて失う可能性があります。
特に、自動車ローンを支払っている場合は、車はローン会社に回収される可能性があります。これは、自動車ローンを支払中には車の所有権はローン会社にあるためです。
一方で、ローンをすべて完済している場合は車の所有権は自分にあるので、車を手元に残しておくことができます。
個人再生を検討する際は、このようなローンの支払いの有無にも注意が必要です。
保証人・連帯保証人に返済義務が移る
個人再生は、対象にする債権者を選ぶことができないので、奨学金などの保証人がついている借金も対象にする必要があります。
司法書士や弁護士が債務整理の手続きを開始する旨が書かれた「受任通知」を債権者に送ったときや、裁判所で個人再生の手続きが始まったとき、債権者は保証人や連帯保証人に借金の返済を求めます。
保証人や連帯保証人は、原則的に分割払いが認められず、残金全額を一括で払うことになります。
手続きにかかる費用が高い
個人再生にかかる費用は弁護士に依頼した場合と司法書士に依頼した場合で費用に若干の差が生まれます。弁護士費用の方が10万円~20万円ほど高くなりますが、司法書士とは違って代行手続きが本人による申立てという扱いになるため、債権者集会や裁判所の呼ばれる場面で同席が許されます。一方で司法書士は代理手続きとなるので同席してほしい場面で同席できません。
手続きに時間がかかる
個人再生の手続きにかかる期間は、裁判所によって違うので具体的な期間を決めることはできませんが、手続きが複雑なので時間がかかります。
例えば、東京地方裁判所の場合、手続きが開始されてから再生計画が承認されるまでに4か月~6か月程度かかります。弁護士に相談や書類作成の時間も含めると半年から1年かかることもあります。
専門家に依頼しないで、自力で個人再生をおこなう場合はさらに時間がかかります。
個人再生のメリット
借金を最大10分の1に減額できる
個人再生をおこなう場合、借金の総額に対して必ず返済する最低額が定められています。
この最低額に応じて、借金の元本を最大で10分の1に減額することができます。
借金総額 |
最低弁済額 |
100万円未満 |
全額 |
100万円以上500万円未満 |
100万円 |
500万円以上1500万円未満 |
借金総額の5分の1 |
1500万円以上3000万円未満 |
300万円 |
3000万円以上5000万円未満 |
借金総額の10分の1 |
住宅ローン返済中の住宅を残すことができる
個人再生には、住宅ローン特則という制度があります。
住宅ローン特則を利用することで、自宅購入時にかかった住宅ローンを個人再生の対象から除外することができ、自宅を残したまま他の借金を減額することができます。
ローンを完済した車を残すことができる
個人再生をおこなっても、自動車ローンを完済していれば車を残すことができます。
しかし、ローンを返済中の場合はローン会社に車を回収される可能性が高いので注意が必要です。ただ、ローン返済中でも車の所有権を持っているなど、特別な条件を満たせば車を手元に残せる可能性もあります。
財産の処分する必要がない
個人再生をおこなっても高価な資産を処分する必要はありません。
ただし、最低返済額を下げるために不要な財産を適切に処分するべきです。
ギャンブルが原因の借金でも手続きできる
個人再生では、借金の原因によらず手続きをすることができます。
自己破産の場合は、ギャンブルや浪費が原因の借金は免責不許可事由とみなされ、完全に借金を消し去ることができない可能性があります。
しかし、個人再生であれば競馬・競艇・パチンコなどのギャンブルや株取引・FXなどの投資や、趣味や娯楽の借金であっても手続きができます。
職業の制限がない
個人再生には、職業や資格に関する制限がありません。
自己破産では一部の職業について制限があり、復権までにそれらの職業に従事できないません。
個人再生は、自己破産に比べるとより多くの人が利用しやすい制度といえます。
個人再生で気をつけるべき注意点
虚偽の申告をしない
個人再生は収支や保有している財産から再生計画案を作成します。収入が少なく、保有する財産もなければ個人再生で圧縮できる借金を最大10分の1にすることが望めますが、収支や保有している財産を少なく報告する虚偽申告は絶対にしてはいけません。
虚偽の申告が見つかった場合は、免責が認められなくなるだけでなく、詐欺破産罪に問われる可能性があります。所有財産を記載する財産目録は自分で作成できますが、このときに意図的に財産を省略することはしないでください。また、直前で財産の所有権を移したり、贈与しても否認の対象外になるため意味がありません。
再生計画案の提出期限を守る
個人再生の手続きにおいて、債務者は一般的に裁判所が設定した期限内に再生計画を提出する必要があります。これは、民事再生法の163条1項によって規定されています。
ただし、特別な事情があった場合、例えば債務者との協議が難航し提出期限内に間に合わない場合など、裁判所へ提出期限の伸長申し立てが可能ですが、必ずしも受理される保証はありません。
そのため、できるかぎり期限内に提出するように努力することが大切です。
特定の債権者を優先して返済しない
個人再生は対象の債権者の平等性を保つことが原則です。「A社は借金がすくないから」、「B社はやさしいから」といった関係性や金額で返済先の優先順位を決めることはしてはいけません。
特定の債権者に対して優先差的に借金を返済する行為を「偏頗弁済(へんぱべんさい)」と呼びます。偏波弁済と判断されるということは「返済ができない状態である」と判断されることと同じで借金が免除されない可能性がでてきます。
個人再生ではなく任意整理を選んだ方が良い場合
個人再生を選ぶときに特に注意が必要なデメリットは、①すべての債権者が対象になってしまうこと、②車や20万円を超える財産が処分される可能性があること、③個人再生の賛同を債権者から得られないこと、④ブラックリストに載ることでクレジットカードやローンが使えなくなることです。
任意整理を選べば①~④のデメリットをいくつか回避できる可能性ができてます。
車や20万円を超える財産を残したい
個人再生は全ての債務者が対象となるため、ローンが残っている車や20万円を超える財産は回収されてしまう可能性があります。また、残しておくことはできても最低弁済額が下がらず個人再生をした恩恵をあまり受けられないといったことにもなりかねません。
しかし、任意整理は債権者を選んでおこなえるため、車のローンや20万円以上の財産のローンが残っている業者を任意整理から外して財産を保持することも狙えます。これはクレジットカードの利用にも言えることで、任意整理から外したカード会社だけは、ブラックリストに登録されても継続的にクレジットカードが使用できる可能性もゼロではありません。
個人再生の手続きで賛同を得られない可能性がある
個人再生を選択する多くの人は「小規模個人再生」という手続きをおこないます。小規模個人再生は債権者数の半数から賛同を得ないと成立しません。賛同を得られないことの方が少ないですが、債権者が2社しかいない場合は1社が否認すれば個人再生の手続きは否決で終了します。
個人再生が否決されれば弁護士費用や裁判所へ支払った手続きの費用だけ借金が上乗せされることになります。もし、弁護士や司法書士に相談した段階で賛同を得られない可能性があると分かった時は任意整理を選ぶか「給与所得等再生」という手続きを選ぶ方がよいです。
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