過払い金の裁判で負けると失うものと勝って得られるもの
過払い金請求は交渉と裁判の2段階に分かれています。
交渉で請求を終わらすと50%前後の過払い金しか戻って来ませんが、裁判をすると100%の過払い金と利息を取り戻せる可能性があります。
裁判をすると判決が出るまでの時間を失いますが、過払い金そのものが失われるわけではありません。裁判には多くの争点があり、たとえ負けてしまっても和解交渉分の過払い金は取り戻すことができます。
過払い金請求に関する裁判で失うものと得られるものを理解していないと正しい判断をすることができず、後から「裁判しなければよかった」、「裁判すればよかった」と後悔します。
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裁判(訴訟)をするかで期間と返還率が変わる
過払い金請求は、貸金業者と話し合いで和解(任意交渉)をするよりも、裁判(訴訟)をすることで、より多くの金額を返還できる可能性があります。
しかし、裁判をするとその分時間がかかるので、解決までにかかる期間は和解したときと比べて長くなります。
話し合いで和解(任意交渉)した場合
返済期間 2ヶ月~
返還率 ~60%
裁判(訴訟)をした場合
返還期間 8か月~
返還率 ~100%+利息
※上記に記載している返還期間・返済率は、アイフルの過払い金請求の目安であって、必ずしも当てはまるものではありません。
※上記に記載している返還期間・返済率は借り入れの状況、アイフルの経営状況によってかわります。
※過払い金が返還されるまでの期間によって、過払い金の元本に対する利息はかわります。
過払い金請求で裁判をするとおこること
過払い金が返還されるまでに長い時間がかかる
裁判をすることにより過払い金が多く返ってくる可能性がありますが、裁判をすることで返還までの時間が長くなるデメリットもあります。
裁判は訴状を提出して約4週間前後に1回目の裁判が開かれ、2回目の裁判は1回目の裁判の1ヶ月後に指定されます。多くの場合、2回目の裁判で事実関係や法律関係を明らかにする取調べを終え、2回目の裁判から約2週間を目安に判決期日が指定されて、判決がでます。
任意交渉は2か月~5か月程度ですが、裁判をする場合の平均的な期間は4か月~8か月程度です。また、貸金業者と争点でもめた場合、過払い金請求の裁判が長期化する可能性があります。
裁判の費用がかかる
過払い金請求の裁判には、裁判費用がかかります。
費用を抑えるために自分で裁判をすることもできますが、裁判に必要な書類の作成や裁判所への出頭などが必要で、過払い金請求や法律に関する知識がない場合はむずかしいです。
また、弁護士や司法書士に依頼した場合、任意交渉で解決した場合よりも成功報酬は高くなります。さらに、代理人としての専門家に対する費用や裁判費用もかかります。
裁判を起こす場合は、請求内容によっては、業者側も弁護士を立てて争ってくるため、個人での対応はかなりむずかしいことがあります。
司法書士・弁護士に依頼することで費用がかかりますが、手間も少なく、結果的により多くの過払い金を取り戻せる可能性が高くなります。
過払い金請求で裁判をするときの期間と流れ
裁判所に訴状を提出する
最初に行うことは、自分が原告となって訴える内容を書いた訴状を、管轄する裁判所に提出することです。
過払い金の額が140万円以下の場合は簡易裁判所、140万円を超える場合は地方裁判所が管轄となります。次に、被告側は受け取った訴状に対して「答弁書」を提出します。
答弁書は、訴状の内容への反論や主張などが書かれたものです。その後、原告には第一回口頭弁論の日時や和解の有無などを記入する「照会書」が届くので、この照会書に必要な情報を記入して、裁判所に返送します。これにより裁判の準備が整います。
口頭弁論がおこなわれる
口頭弁論は、訴状を提出してから約1か月後におこなわれます。
第一回口頭弁論では原告が訴状の内容を陳述して、被告は答弁書の内容を陳述します。和解ができなかった場合、月に1度のペースで口頭弁論がおこなわれます。
原告と被告は、各期日の前にそれぞれの主張や反論を書いた「準備書面」を提出することになります。交渉が納得できるものであれば、和解することもあります。
和解するか判決がでるまで裁判を続ける
裁判は原告と被告が互いに主張を繰り返しながら進められて、月に1度の口頭弁論で解決を目指します。
過払い金請求裁判の場合、4回~5回の口頭弁論をおこなった後に判決が出ることが一般的です。
しかし、判決が出るまでに過払い金や返還期間など納得できる内容で話がまとまれば和解することも可能で、裁判を続けるよりも早く解決することもあります。
過払い金が返還される
和解ができればおよそ2か月~4か月で過払い金が返ってくることが多く、裁判の判決がでれば判決内容に従った期限までに返還されます。
司法書士や弁護士に依頼した場合には、事務所の口座に振り込まれた後に、かかった費用を差し引いた金額が指定口座に振り込まれることになります。
過払い金請求の裁判にかかる費用
過払い金請求の裁判には、裁判費用と弁護士・司法書士に支払う費用があります。
裁判費用
収入印紙
裁判所に過払い金請求をするためには、手数料として収入印紙を納付する必要があります。
収入印紙代は、請求する過払い金額によって違います。
請求額が100万円以下の場合は10万円ごとに1,000円、100万1円から500万円の場合は20万円ごとに1,000円、それ以上は50万円ごとに2,000円となります。
請求する過払い金額によって違うので、予め収入印紙代を確認し、申し立てる前に必要な費用を把握しておくことが大切です。
予納郵券
郵券代は、訴状の副本を貸金業者に郵送するためにかかる費用で、各裁判所によって金額が違います。
例えば、東京簡易裁判所の場合は5830円、東京地方裁判所の場合は6000円になります。また、当事者の人数が増えると費用も増えることもあります。
裁判に勝って貸金業者に請求することができれば、郵券代も返還されます。裁判をする場合は、費用も含めて最適な方法を選ぶ必要があります。
代表者事項証明書
過払い金請求で裁判をするためには貸金業者の商号や本店住所、代表者氏名などが記載された代表者事項証明書が必要です。
代表者事項証明書は近くの法務局で取得することができ、1通につき600円程度かかります。また、裁判に勝つことで、郵券代や貸金業者による費用を請求することができます。
訴訟手数料・日当交通費等
過払い金請求の裁判をするときには、司法書士や弁護士によっては、訴訟手数料や日当交通費など費用が別途かかる事務所もあります。
別途費用がかからない事務所もあるので、依頼をする前に事務所に確認が必要です。
司法書士・弁護士に支払う費用
相談料・着手金
過払い金請求の裁判で司法書士・弁護士に依頼する場合には、費用として相談料や着手金がかかることがあります。
相談料は事務所によって無料や30分~1時間5,000円の相場があり、着手金は貸金業者の数によって変わり、1社につき1万円から2万円程度が相場となっています。
司法書士や弁護士に依頼する前に事務所のホームページなどで費用について確認して、最適な方法を選んでください。
基本報酬
過払い金請求の裁判では、司法書士・弁護士に対して基本報酬がかかります。この基本報酬は、過払い金があるか調べる、いくらあるか計算する、貸金業者との交渉などの過払い金請求の手続きにかかる費用です。
過払い金請求の裁判では、司法書士や弁護士によって支払う費用が違います。
司法書士の場合は、日本司法書士会が設定した着手金、基本報酬、解決報酬を含め最大5万円までが決められています。一方で、弁護士については「適切かつ妥当な金額」とされており上限が決まっていません。
事務所によっては着手金の代わりに基本報酬がかかったり、着手金も基本報酬の両方かかったりするので、事前に確認することが大切です。
成功報酬
過払い金請求が成功した場合、司法書士・弁護士に支払う費用として成功報酬が発生します。
成功報酬は、回収した過払い金に対して決められた割合で計算され、裁判なしで和解した場合は20%、裁判をした場合は25%が上限となっています。
この上限は日本司法書士会と日本弁護士連合会で決められています。
過払い金請求で裁判をするときに気を付けること
取引が分断か一連か
過払い金請求をおこなうときの大きなポイントとなるのが、借り入れをするときにどのように取引をおこなっていたかです。
借り入れを繰り返して、同じ契約番号で完済をしている場合は、一連の取引として扱われます。一方で、完済後に空白期間があって再度借り入れをする場合は、分断された取引として扱われる可能性があります。
明確な基準がないので判断が難しいですが、取引が分断か一連かによって、取り戻せる過払い金の金額が変わります。
貸金業者が「悪意の受益者」かどうか
裁判で過払い金を返還するために、貸金業者が「悪意の受益者」であることを証明する必要があります。悪意とは、不当な利益を知っていながら受け取っていることを意味します。
利息制限法を超える金利を受け取っているだけではなく、それが不当な利益であることを知っていることが重要です。
過払い金の請求には5%の利息をつけて請求することができます。貸金業者が借主から不当に利息を得ている場合にのみ、過払い金に利息をつけて請求することができます。
「期限の利益喪失」があるかどうか
「期限の利益喪失」は、借り入れの取引期間中に長期にわたる返済遅延や滞納があった場合に発生します。
期限の利益とは、返済期限まで支払いを待ってもらえるという債務者の利益を指し、これにより債務者は返済期限までお金を返さずに済むことができます。
しかし、期限の利益を喪失すると、貸金業者には残額の一括返済を求めることができるようになります。特に過払い金請求の裁判では、貸金業者が期限の利益喪失を主張して、遅延損害金利率で計算しなおして借主に請求することがあります。
期限の利益損失は貸金業者の対応によって違うので、長期にわたって返済を延滞や滞納したことがある場合は注意が必要です。
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