過払い金請求を自分でする注意点と個人よりも専門家に依頼すべき理由
「過払い金請求は自分でできる?」 「個人で過払い金請求するデメリットは?」
といったご質問が多く寄せられています。司法書士や弁護士に払う依頼費用をかけないために、専門家の手を借りずに自分で過払い金請求することができます。
しかし、個人が貸金業者を相手に過払い金請求をすると、過払い金が手元に戻るまでに時間がかかる、取り戻せる過払い金が少なくなる、過払い金請求ができなくなるデメリットがあるります。
また、1日でも早く1円でも多く過払い金を取り戻すためには、個人ではなく専門家に依頼して過払い金請求するべきです。
これには明確な理由があるので、自分で過払い金請求するケースと司法書士や弁護士に依頼するケースのデメリットを知ったうえで、納得できる方法で過払い金請求するべきです。
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過払い金請求を自分でする方法と流れ
借り入れした日を確認する
貸金業者から借り入れをした日を確認します。
忘れてしまっていても、信用情報機関に問い合わせれば教えてもらえます。
貸金業者から取引履歴を取り寄せる
取引履歴の申請書に必要事項を記入して、貸金業者から取引履歴を取り寄せます。
貸金業者によって申し込み方法は違いますが、電話・FAX・郵送の他に貸金業者の窓口に行き手続きをすることもできます。
貸金業者1社あたりの取引履歴の取り寄せ手数料は約1,000円です。
過払い金を計算する
過払い金がいくら発生しているか、引き直し計算をします。
利息制限法の金利にもとづき、取引履歴の情報から借り入れした時にかかった上限金利を計算し直すことで、過払い金がいくら発生しているかを算出することができます。
インターネット上で過払い金計算ソフトをダウンロードして計算できますが、間違った計算をして過払い金請求をすると請求が断られることがあります。
過払い金を貸金業者に請求する
請求金額・過払い金の発生期間・過払い金の請求理由を書いた「過払い金返還請求書」と「引き直し計算書」を貸金業者に送って過払い金請求をします。
郵送は、自分の住所・連絡先・いつどのような内容で送ったのかがわかるように内容証明郵便で行うようにしてください。
貸金業者1社あたりの内容証明郵便代は約1,200円~1,500円です。
貸金業者と話し合いの交渉をする
貸金業者と話し合い、交渉をします。過払い金をいくら返還するか、過払い金をいつ支払うかといった内容を話し合いますが、貸金業者に言われるがままに和解すると、取り戻せる過払い金が少なくなったり返還が遅くなったりしてしまいます。
貸金業者が「不当な金利で貸し付けていることを知っていて返済させていた」悪意の受益者であれば、5%の利息付きで過払い金請求することができます。
悪意の受益者には利息付きで過払い金請求をしましょう。「過払い金に5%の利息を付けて取り戻す方法と請求できる条件」で詳しく解説しています。
裁判をする
和解よりも手間と時間はかかりますが、裁判をした方が取り戻せる過払い金が多くなる可能性があります。
裁判をするためには、収入印紙代、郵券代、代表者事項証明書代といった費用が発生します。収入印紙代は過払い金の請求金額により大きく変わります。
裁判所に過払い金請求の対象となる貸金業者との取引履歴や必要書類を準備して提出する必要があります。裁判中も貸金業者と和解することができますが、和解によって過払い金の支払いが遅れたり、支払われなかったりすることもあるので、注意すべきです。
入金がある
貸金業者から個人の口座に過払い金の入金があります。
和解もしくは裁判(訴訟)によって話がまとまった後に、入金までの期間は2か月~4か月程度かかります。
請求のための準備の時間を含めると早くて半年、長いと1年半以上時間がかかるということも珍しくありません。
過払い金請求を自分でするデメリットとメリット
過払い金請求を自分でするデメリット
必要な書類の準備と引き直し計算に手間と時間がかかる
過払い金請求では多くの書類を用意しないといけないので、自分で過払い金請求をすると、書類の準備と引き直し計算に手間と時間がかかります。
過払い金請求をするには取引履歴が必要です。取引履歴を取得するには貸金業者に問い合わせをする必要があります。
また、利息制限法に沿った利息で過払い金がいくら発生するか算出するために、引き直し計算をする必要がありますが、引き直し計算をするにも知識が必要です。
さらに、過払い金請求が話し合いで和解できず裁判をした場合は、平日に出廷する必要があるので仕事を休む必要があります。
取り戻せる過払い金が少なくなる
過払い金請求を自分でする場合、貸金業者との交渉に慣れていない素人なので、取り戻せる過払い金が少なくなるリスクがあります。
貸金業者の担当者は、個人による過払い金請求の場合、高額な過払い金の返還を渋る傾向があります。過払い金請求を自分でおこなうと、取り戻せる過払い金が少なくなる可能性が高いですが、司法書士や弁護士のような専門家に依頼をすることで、取り戻せる過払い金を最大限にすることができます。
過払い金請求ができなくなる可能性がある
過払い金の時効をむかえてしまう
過払い金は、最後に取引した日から10年で時効が成立するので、時効が成立してしまうと取り戻すことができなくなります。
過払い金請求をするために必要な書類の準備や、引き直し計算に時間がかかると、手間取っているあいだに過払い金の時効が成立して、過払い金を取り戻すことができなくなるリスクがあります。
貸金業者が倒産してしまう
貸金業者が倒産してしまうと、過払い金請求をすることができなくなってしまいます。
貸金業者が倒産しているかどうかわからない場合は、司法書士や弁護士に相談することをおすすめします。大手貸金業者であっても倒産する可能性があるので、経営状況が悪い場合ははやめに過払い金請求をすることが大切です。
借り入れや過払い金請求が家族にバレる
過払い金請求を自分ですると、貸金業者や裁判所からの書類や連絡が自宅や職場に届くことで、家族にバレるリスクが高くなります。
司法書士・弁護士に依頼をすれば、書類の送付先を司法書士・弁護士事務所にすることができるので、リスクを回避することができます。また、司法書士・弁護士からの連絡も、時間や連絡手段を相談しておくことで、家族にバレる心配がありません。
過払い金請求を自分でするメリット
過払い金請求を自分ですると、手続きにかかる費用が安いメリットがあります。
まず、過払い金請求を自分ですることで、司法書士や弁護士に依頼する費用をなくすことができます。弁護士や司法書士に依頼すると費用がかかりますが、自分でする場合には依頼する費用がかかりません。
ただし、過払い金請求を自分でするには法律に関する知識が必要なので、書類の作成や引き直し計算といった準備に手間や時間がかかります。また、過払い金請には時効があるので、手続きにかかる費用だけでなく、手続きの準備にかかる手間や時間を考えて、自分でするかどうかを判断すべきです。
過払い金請求を自分でするときにかかる費用
過払い金請求を自分でするときには、司法書士や弁護士といった専門家に支払う費用がありませんが、書類にかかる費用があります。また、裁判をすると高額な費用がかかります。
取引履歴の取り寄せ手数料
取引履歴の取り寄せには、1,000円程度の手数料がかかります。
内容証明郵便代
過払い金返還請求書を送るのにおよそ1,200円〜1,500円かかります。
印紙代
印紙代とは、裁判の申立手数料のことで、過払い金の請求額によって支払う金額が変わります。
請求額 |
手数料 |
100万円以下 |
10万円単位で1,000円 |
100万1円~500万円以下 |
20万毎に1,000円 |
500万1円~1,000万円 |
50万円ごとに2,000円 |
郵券代
郵券代とは、訴状の副本を、裁判所から貸金業者へ郵送するための費用です。裁判で勝てば貸金業者に請求することができますが、一時的に自分で負担をする必要があります。
裁判所によって違いますが、およそ6,000円前後を支払います。支払方法は、郵便切手、現金、あるいは裁判所口座への振り込みがあります。
代表者事項証明書の取得にかかる費用
最寄りの法務局で、収入印紙代600円を支払って代表者事項証明書を取得します。
代表者事項証明書は、貸金業者の代表者が商業登記簿に正しく登記されているかを証明するための証明書で、過払い金請求の裁判をするときに必要になります。
過払い金請求を自分でするときの注意点
取引履歴を取り寄せるときの注意点
取引履歴が必要な目的を貸金業者に伝えない
過払い金請求をするためには、貸金業者からいつ、何パーセントの金利で借り入れをして、いつ返済したかなどが記された取引履歴を取り寄せる必要があります。
ただし、このような取引履歴を貸金業者に要求するときには、注意しなければいけないことがあります。取引履歴を取得するときに、貸金業者に自分が過払い金を請求する意図を伝えてしまうと、取り戻せる過払い金が少なくなる可能性があります。
民法705条で、返済義務がないと知っていながら任意で返済していたお金については、過払い金請求できないことが記されています。そのため、取引履歴を取り寄せるときには、過払い金請求をすることを伝えないようにしましょう。
取引履歴の取り寄せに時間がかかる
取引履歴は、過払い金請求をするために必要な書類の1つですが、貸金業者から取り寄せるには1か月~2か月の時間ががかかります。
貸金業者によっては、司法書士・弁護士からの依頼を優先して、個人からの依頼を後回しにすることもあります。
そのため、取引履歴の取り寄せに時間がかかりすぎると、過払い金請求の時効が成立してしまう可能性があります。時効が迫っている場合は、自分でやらずに司法書士・弁護士にいち早く依頼するべきです。
ゼロ和解の提示に応じない
貸金業者から「返済中の借り入れを0円にしないか(ゼロ和解)」や「和解すれば利息を減らせる」といった和解を提示されることがあります。
しかし、その和解書に、過払い金請求の権利を放棄する旨が書いてあると、過払い金請求ができなくなるので注意しましょう。
過払い金の引き直し計算の注意点
過払い金の引き直し計算を間違えない
過払い金請求をするには、まず貸金業者から取引履歴を取り寄せて、それをもとに過払い金の引き直し計算をする必要があります。あるいは、取引履歴を処分してしまっている貸金業者の場合は、通帳の引き落とし履歴や公開されている取引履歴から推定計算しなければなりません。
引き直し計算を間違えてしまうと、取り戻せる過払い金の額が少なくなったり、貸金業者に過払い金請求を断られる可能性があります。推定計算が多いほど過払い金請求が難しくなるので、専門家に相談するべきでしょう。
借り入れを繰り返している場合の時効期限の間違い
借り入れと完済を繰り返している場合は、その取引が一連か分断かによって、借り入れの時効の時期が変わるので、計算が複雑になります。
また、借り入れが一連か分断かによって過払い金の額が変わります。
貸金業者と交渉中の注意点
返済中の借金の返済や貸金業者からの督促が止まらない
自分で過払い金請求をすると、返済中の借金の返済や貸金業者からの督促も止めることができません。
司法書士や弁護士に依頼をすれば、受任通知を送付することで、借金の返済や貸金業者からの督促を止めることができます。
返済が止まっていると勘違いをして、支払いが滞ってしまうと信用情報機関に事故情報(ブラックリスト)が掲載される可能性があるので注意しましょう。
不当な和解条件で貸金業者と和解しない
貸金業者は、過払い金を少しでも少なく、支払日を遅くしたいので、不当な和解条件を提示してきます。
過払い金を多く取り戻すには、そのような不当な和解条件で和解せずに、辛抱強く貸金業者と交渉を続ける必用があります。
裁判をするときの注意点
利息付きで過払い金を請求する
貸金業者が悪意の受益者であれば、5%の利息付きで過払い金請求することができます。
悪意の受益者とは、「不当な金利で貸し付けていることを知っていて返済させていた」貸金業者のことです。
貸金業者は、支払う過払い金を少しでも少なくしたいと考えて、悪意の受益者ではないという主張をしてくるので注意しましょう。
借り入れの分断を貸金業者に主張される
借り入れと完済を繰り返していると、その借り入れを一連と判断するか、分断と判断するかで、過払い金の時効期日や過払い金の額が変わります。
分断と判断されれば、時効が成立する期間の借り入れに対しては過払い金請求ができず、取り戻せる過払い金の額が少なくなります。
そのため、貸金業者は借り入れの分断を主張してくるので、注意が必要です。
貸金業者が取引履歴を処分している可能性がある
貸金業者が取引履歴を処分している場合は、通帳の引き落とし履歴や公開されている取引履歴から推定計算をする必要があります。
推定計算が正確ではないと指摘をされて、取り戻せる過払い金の額が少なくなったり、貸金業者に過払い金請求を断られる可能性があります。取引履歴が処分されていた場合は、専門家に相談するべきです。
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