特定調停とは?デメリットとメリットやかかる期間と必要書類を解説
特定調停は、債務整理の一つです。債務者と債権者が協議し、借金の返済方法を合意することで、債務を整理することを目的としています。特定調停は、債務者と債権者が合意することで成立しますが、債権者が合意しない場合は成立しません。
特定調停には信用情報機関に事故情報が登録され、他の債務整理に比べて成立率が低いというデメリットがあります。しかし、特定調停には債務整理を安くすませることができたり、強制執行を避けることができるメリットもあります。特定調停をおこなう際には、必要書類を集め、裁判所へ申し立てを行う必要があります。
この記事では特定調停のデメリット・メリットや特定調停にかかる期間と流れ、必要な書類について解説しています。
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特定調停とは?どのような目的で行われるのか
特定調停は、経済的に困難な状況にある債務者の金銭債務を解決することを目的とした制度です。この制度は、企業や個人を問わず、事業活動をしていない債務者にも適用されます。
特定調停をおこなって、一旦合意に達し、文書に記録されると、最終的かつ明確な判決と同様の強制力を持つため、記録された内容のみに債務が限定され、それ以上の徴収はおこなわれなくなります。
特定調停と任意整理の違い
任意整理の場合、債務者は法律の専門家や司法書士の力を借りることがほとんどです。一方で特定調停は、債務者が独自に動く、もしくは弁護士の力を借りて対応することができます。
多くの場合、後者の選択肢の方が人気があり、債務者は債権者との交渉のために調停委員会のメンバーとチームを組むことができます。
一方、任意整理を選択した場合は、代理人(通常は弁護士や司法書士)を介して債権者と交渉を行い、契約書を取り交わす必要があります。
特定調停と任意整理どちらを選ぶべきか
特定調停は自分で申立書類の作成や裁判所の出廷をおこなうため、弁護士や司法書士に依頼する費用がかかりません。そのため、申立手数料(収入印紙)500円と郵送費の数百円で抑えることができます。さらに、特定調停は強制執行停止の申立てもおこなうことができ、裁判所に認められれば強制執行を停止することができます。
ただし、過払い金請求を同時に進めることができないため、特定調停が終わった後に過払い金請求をするという流れになります。
一方で、任意整理は特定調査とはちがい、弁護士や司法書士に依頼してほとんどの手続きを丸投げすることができます。依頼費用は対象の債権者1社につき1万1000円以上かかることがほとんどですが、準備する書類や裁判所に出廷するといった手続きの手間がなく、私生活に影響をあたえることがほとんどありません。また、特定調停では行えなかった過払い金請求も同時にすすめることができます。
それぞれ特定調停のメリット、任意整理のメリットはちがうので自分の立場にあった選択をするのが理想です。債務整理に関する相談は無料なのでどちらを選ぶべきか相談してみるのもよいでしょう。
特定調停と個人再生・自己破産の違い
特定調停は、個人の負債を整理するための特別な手段で、個人の借金を整理するために負債者と債権者の間で調停をすることを指します。特定調停には、負債者が全額返済することができない場合でも、債務の一部を償還することができる可能性があります。
個人再生は、個人が自らの負債を整理するために、債務を償還するために資産を売却したり、収入を上げるために仕事を探したりすることを指します。個人再生では、負債者自身が全額返済するために努力をすることが求められます。
自己破産は、個人が負債を返済できなくなった場合に、債務を免除するための特別な手段で、個人が負債を全額免除することができる可能性があります。ただし、負債を免除するためには、資産を全て売却する必要があります。
特定調停は、個人再生よりも厳しい条件があります。個人再生は、自己破産よりも厳しい条件があります。
特定調整をおこなうデメリット
債務名義の正本と執行文が取得されるため、強制執行が容易になる
借金の返済をしない場合、最終的な債権回収手続として債権者に「強制執行」をおこなわれる可能性があります。そして、強制執行の申立てに先立って、「債務名義」を取得することが必要になります。
「債務名義」は、支払いを求める権利が存在することを証明し、その権利を強制的に実現することが裁判所によって許可された文書です。
債務名義がある場合、債務者が記載された内容を履行しなかった場合に、債務者はすぐに差し押さえなどの強制執行を申し立てることができます。
裁判所による出廷や手続きは手間になる
特定調停は裁判所を介した手続きであるため、申立てをするには自分自身で裁判所に行って手続きをする必要があります。その後、事情聴取期日、調停期日の2回は裁判所に出廷する必要があります。
これにより、債権者が複数社の場合、出廷の回数も増えることになり、平日の日中に出廷するため、仕事に支障が出る可能性もあります。他の債務整理方法に比べ、手間がかかります。また、申立てには各種の書類が必要で、その期間中には債権者からの督促や取り立てが続く可能性もあります。申立てから調停成立までには約2ヶ月程度の期間がかかります。
特定調停の成功する確率が低い
特定調停は、成功率が低い債務整理方法の一つです。司法統計によると、特定調停の申立て件数は2,423件であり、そのうち349件が成立し、成功率は約14%となっています。
これは、特定調停が成立するためには、債権者との合意が必要だということを示しています。しかし、すべての債権者と容易に合意することはできないため、特定調停の成功率は低いものとなっています。
信用情報機関(ブラックリスト)に載ってしまう
特定調停を行うと、信用情報機関には事故情報が登録されます。これは、ブラックリストに載ってしまう状態を意味します。一般的に、事故情報の登録期間は、完済から5年程度です。そのため、特定調停を行った場合、将来の信用に影響を与える可能性があります。
ブラックリストに載ることでのデメリット
銀行などの金融機関からの融資申請が拒否される可能性が高くなる。
クレジットカード申請が拒否される可能性が高くなる。
住宅ローン、カー・バイクローン、給与貸し付けなどの融資申請が拒否される可能性が高くなる。
雇用契約、住宅契約などの信用調査が厳しくなり、契約が取り消される可能性が高くなる。
督促をすぐに止めることができない
特定調停は、申立が完了するまで債権者からの督促を止めることができません。対して、任意整理の場合は、弁護士が受任すれば、速やかに債権者からの督促を止めることができます。これは、特定調停に比べ、手続きが簡単で迅速なためです。
過払い金の請求は特定調停の後になる
特定調停では、現在の借金の利息を利息制限法の上限金利で引き直し計算します。これにより、過払い金として返還請求が行える場合がありますが、特定調停は過払い金返還請求をするための制度ではありません。
特定調停は、引き直し計算の結果減額された借金を、どのくらいの期間で支払っていくのかといったことを、債権者と合意するための制度です。過払い金が発生している場合は、特定調停とは別に債権者に対して過払い金返還請求を行う必要があります。
他の債務整理(任意整理・個人再生・自己破産)の場合は、交渉や手続きと同時に過払い金返還請求も行えるため、これは特定調停だけのデメリットといえます。
そのため、特定調停よりも他の債務整理の方法が選ばれることが多くなります。過払い金については、特定調停以外の方法で請求することが可能であり、特定調停を選択する際には、過払い金があるかないかを踏まえて、優先的に請求をするか判断する必要があります。
特定調停をおこなうメリット
債務整理の中でも安くすませることができる
特定調停が債務整理の中でも安くおこなうことができます。
債権者との合意がない限り、調停は成立しないため、債権者からの許可が得られない場合は、費用を掛ける必要がない。
裁判所による調停には、弁護士を雇う必要がないため、費用を抑えることができる。
調停は、弁護士による任意整理や個人再生などの債務整理よりも簡単な手続きであるため、手数料などの費用を抑えることができる。
調停は、返済期間が短いため、返済期間中の利息などの費用を抑えることができる。
ただし、特定調停は成立率が低いため、債務整理の方法としては、他の方法に比べ不利な点もあることがあるので要注意です。
債権者(貸側)との間に調停委員が入ってくれる
特定調停は、裁判所による債務整理の方法で、債務者が申し立てをすることで行われます。 調停委員が主導して話し合いが進み、債務者や債権者と直接交渉をすることはありません。
調停委員は、債務者が返済できる状態にあるか、返済計画などを調べて、調停条項案を作成します。 調停条項案は、債務者が承諾した上で成立し、債務者はそれに従って返済することになります。そのため、口論になることは少なく、スムーズに債務整理を進めることができます。
財産の差し押さえなどの強制執行を避けることができる
債務者と債権者の間で、債務の履行がない場合は、強制執行を容認する旨の公正証書が作成されている場合があります。しかし、特定調停では一部の債権者が強制執行をすることがないように、民事執行の手続き停止を命ずることが出来るようになっています。
特定調停が成立すると、裁判所が民事執行を停止することで、債権者が強制執行を行うことはできなくなります。そのため、強制執行をされる前に整理を行うことができ、財産の喪失を防ぐことができるという利点があります。
しかし、裁判所の裁量にもよるため、必ずしも強制執行を停止できるとは限りません。
特定調停をおこなう流れと期間
最終的に、調停条項書が成立した場合、債務者はそれに従って返済する責任があります。返済が遅れるなどの問題が発生した場合には、再度特定調停を申し立てることもできます。また、調停条項書に従って返済を終えると、特定調停は終了します。
特定調停は、債務者にとってはスムーズに債務整理を進めることができるという利点がありますが、成立率は低いため、事前に手続きや手数料などを考慮して検討することが必要です。
1.必要な書類を準備して特定調停の申立書を作成する
2.相手側の管轄する簡易裁判所に申し立てを行う
3.裁判所から指定された日時に事情聴取に出席する
4.調停日に出席し、債権者を含めた協議を行う
5.調停が成立したか、不成立かが決まる
特定調停をおこなうときに必要な書類
特定調停申立書
関係権利者一覧表
特定債務者であることを明らかにする資料
家計収支表
所得額証明書および納税証明書
給与証明書または源泉徴収票
賃貸借契約書のコピーなど
光熱水道料金の領収書のコピー
債権者の資格証明書
その他裁判所が必要とする書類
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